地方の広告代理店に勤めるサラリーマンが「欲しいの本質」を読んでみての感想
地方の広告代理店に勤める”やすたん”と申します。
普段は、カーディーラーの広告全般に関わる仕事をしております。
広告代理店として働いていると、一番の悩みはこれだと思います。
ユーザーが欲しいものとは何だ?
広告をクライアントから代理として請け負う以上、成果を出すことへの意識は忘れてはいけないと思います。
成果を出すためにはユーザーの欲しいものをしっかり理解できていることが大切です。
しかし、そもそも今の時代、消費者が心から欲しいものなんてあるのか? ここまで便利になった生活空間の中で・・・
これはいかんぞ。
と思い、急いでいつもの某本屋へ向かいました。
何か、このモヤモヤとした感情を打破してくれるような本はないかと探していたところ、1冊の本に出会いました。
「欲しいの本質 人を動かす隠れた心理『インサイト』の見つけ方」著者:大松 孝弘・波田浩之 2017年12月発行
消費者の欲しいという感情の本質を探ることができそうだと思い、早速読んでみました。
読み終わった上で、簡潔にまとめた内容と個人的な感想を記しましたので、私のように悩んでいる地方の広告代理店に勤めるサラリーマンの方や広告代理店に勤めようと考えている大学生の方はぜひご覧ください。
※私なりの解釈となりますので、実際には読んでいただき異なる解釈はあると思います。その点は、皆様の考え方を尊重していきましょう!
さて、いきなりこの本の結論から。
結論:
「人間は、自分が欲しいものを説明できない。なので人間を見に行く」です。
始めに本のタイトルにもある『インサイト』とは何か?
今回のテーマで扱っている”欲しい”という感情は、目に見えるものではありません。 言わば隠れている人の感情部分となります。
その隠れた感情を探すための道具として『インサイト』という考え方があります。
本書では、この『インサイト』を「人を動かす隠れた心理」と定義づけております。
この『インサイト』を理解できれば、見えてこなかった”欲しい”が見えてくるとも書かれています。
では、具体的に『インサイト』を紐解いていきましょう。
そもそも、なぜ『インサイト』が必要なのか?
それは、「だいだい、良いんじゃないですか?時代」が現在の日本だからだと著者は言います。
「だいだい、良いんじゃないですか?時代」 とは、例えばペットボトルのお茶が飲みたいと感じた際、コンビニなどで明らかに不味そうだなと思う商品が陳列されておらず、逆に”こういうお茶が飲みたい”という強い要望もない状態。
つまりは、どのお茶も「だいだい、良いんじゃないですか?」 とは思えるが、それ以上の言葉はないような状態のことを指します。
これは、お茶に限ったことではなく、あらゆる商品がそのような状況となっております。
ちなみに、この状況は先進国に共通の現象のようです。
これは、先進国ならではの悩みとして、”市場の成熟化”・”コモディティ化”・”陳腐化”などが原因だと言われています。
ひとつ前の世代は、「だいだい、良くない時代」でした。
これは、すなわち「わかりやすい問題に応えていればモノが売れた時代」です。
「わかりやすい問題」とは、いわゆる”ニーズ”と呼ばれるものです。
例えば、夏場に暑いオフィスで仕事をするのはツライという悩みがあり、これに対しての”ニーズ”は「暑いから涼しくするものが欲しい」といったわかりやすいものでした。
その解決策は、言うまでもなくエアコンです。
しかし、「わかりやすい問題に応えていればモノが売れた時代」 は終わりを迎え、「だいだい、良いんじゃないですか?時代」へと移り変わってきたのです。
では、「だいだい、良いんじゃないですか?時代」において、必要な考えとは。
本書には、
小さい差を競い合うのではなく、「隠れた欲求」に応える「革新的変化=イノベーション」でまったく新しいものを作り出すことが必要
と書かれております。
※本書内には、例として毎度のごとく出てくる、アップルの「iPhone」と日本が必死に作っていた「ガラケー」の違いが挙げられています
ここからは、より具体的に『インサイト』についての説明を。
まずは、「マクドナルドの大きな誤算」という内容に沿って紹介したいと思います。
2006年当時、日本マクドナルドの話です。
お客様にアンケート調査をした際、「低カロリー」「オーガニック」「ヘルシー」といった健康重視のメニューが挙げられました。
その意見を参考に、新商品「サラダマック」が導入されたのですが、実際には売り上げが伸びず、「サラダマック」は撤退せざるおえませんでした。
その後、今度はハンバーガーの肉の量を大幅に増やした「メガマック」「クォーターパウンダー」といった商品を発売し、これが大ヒットしました。
顧客が求めていたのは、実は「ヘルシー」とは正反対の商品だということ。
マクドナルドに対する消費者の『インサイト』は、アンケート調査によって作られた「サラダマック」のような「ヘルシー」な食べ物ではなく、実は「メガマック」のような「分厚い食べ応えのあるハンバーガーを見せられると、ガブッとかぶりつきたくなる」だったといえます。
このようなことが起きた原因として、「健康」「ダイエット」という建前的な意識が、「肉を食べる快感」を覆い隠してしまったせいである。
実は、新しいマーケティングや行動経済学と呼ばれる学問の領域では、「消費者は、自分の行動を正しく説明できない」と言われています。
その背景には、脳科学の知見として、人間の思考や行動は5%の意識と、95%の無意識から成り立っているという数字からだそうです。
結論にも書いたように、“人間は自分が欲しいものを説明できない“という理由はこの数字からです。
本書には、本人も気付かない不満を解消できる。そんな価値を提供できることが、「だいだい、良いんじゃないですか?」を超えられるイノベーションだと述べられています。
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ここで一旦、『インサイト』と『ニーズ』の違いを改めて明確にしましょう。
『インサイト』は、「顧客を動かす隠れた心理」です。なので、消費者自身も気付いていない隠れた状態です。
→「だいだい、良いんじゃないですか?時代」で重要指標。
一方、『ニーズ』は、「本人が明確に認識できている欲求」で、顕在化された状態となります。
→「だいだい、良くない時代」で重要指標。
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ここからは、この『インサイト』を構成する4つの要素の説明を。
『インサイト』は「客観的な事実に基づく感情」でなければいけません。
「感情」だけでは、的外れなアイデアを生んでしまう可能性が高いからです。
人を動かすアイデアを導くには、その「感情」(上記のマクドナルドの事例でいうと、”分厚い食べ応えのあるハンバーガーを見せられると、ガブッとかぶりつきたくなる“のこと)が生まれる要因となった「事実」が必要であり、アイデアを作るためには、「事実」が「感情」とセットになって初めて意味のある『インサイト』になります。
この考え方のフレームこそが、「インサイト4要素」です。
要素1:[シーン(場面)]感情が生まれた場面。
要素2:[ドライバー(源泉要因)]感情を生み出す元となった、直接的な要因。
要素3:[エモーション(感情)]気分や気持ち。
要素4:[バックグラウンド(背景要因)]感情が、価値・不満・未充足いづれかである背景的な理由。
4要素のなかで、 要素3:[エモーション(感情)] のみは客観的事実が含まれなくてもいいですが、他の3つは含まないといけないと本書には書かれております。
この4要素を書き出すことで、隠れた心理である『インサイト』を導けると言います。
次にこの4要素を紐解く上で大切なのは、“人間を見に行く”ことです。
本田技研工業創業者である本田宗一郎氏は、次のような趣旨のことを話しています。
研究所は人間の気持ちを研究するところであって、技術を研究するところではない。研究所の技術者が第一にすべきことは、お客様の心を研究し、お客様に喜んでもらう将来価値を見付けること。それが分かったら、手段である技術を使って、その将来価値を実現すればよい。
人間の気持ち・お客様の心を研究することがスタートであり、その気持ちや心を充たす価値を考える。
人間の気持ち・お客様の心は表に出てくるものではなく、『インサイト』の隠れた心理という考え方と合致します。
要は、4つの要素を見付けるためには、消費者の声を聞くだけでなく、その”人”を見て知ることが大切なのだと自分は感じました。
その”人”の生活環境から、嬉しい・楽しいと感じる細かなポイントまでの客観的事実、つまりは無意識の内に通り過ぎている行動を研究分析しなさいとのことだと思います。
まとめに入りましょう。
結論:
「人間は、自分が欲しいものを説明できない。なので人間を見に行く」です。
ここからはやすたん的感想となります。
「欲しいの本質」とは、消費者に聞いたりアンケートを取ったりして導くのではなく、「欲しい」という感情を提供してあげること。その本質的な部分とは、人の無意識を研究し、潜在的にある商品や企業ブランドの価値を顕在化してあげることこそが、「欲しいの本質」へと導ける。
この本を読んで、ターゲットを絞ることの本質的な意味を知れたような気がします。「だいだい、良くない時代」から脱した日本(他先進国も含む)で商品を売ろうとした際、顧客の”ニーズ”一つ一つに応えていても、「本当に欲しいもの」は作れない。イノベーションを求められる現在において、大事なことは、「将来の価値の延長線上にない、新しい価値を創造すること」であり、新しい価値を創造するには、個としての”人”に絞り、その”人”の無意識を紐解くことこそがカギとなると感じました。
“インサイト”の具体的なことなど、ここでは紹介しきれていないことが本書では分かりやすく説明されております。もっと知りたいと思った方は、ぜひこの本を読んでみてください。
PS.
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